最近、Xでこんなチャートをよく見かける。 ビットコインの価格を4年ずつ4段に積み重ね、それぞれを「Bear(弱気)」「Pre-Bull(仕込み)」「1st Bull」「2nd Bull(天井)」の4局面に色分けしたものだ。 2014年も、2018年も、2022年も、弱気で始まって、やがて天井へと駆け上がる。 どの段も同じ形に見える。

https://x.com/nobrainflip/status/2074958454540599469

この絵を信じると、今はちょうど弱気の局面にあたる。 2026年はBear、2027年から仕込みが始まり、本当の上昇は2028年から2029年。 つまり、もう少し耐えれば強気に転換し、その後は例年どおり急騰する、という筋書きになる。 待っていれば、また大きく上がる。 悪くない話だ。

ただ、そのうまい話には裏を取りたくなった。 形が「似ている」ことと、次も「同じだけ上がる」ことは、別の主張である。 本当に、次も同じだけ上がるのか。自分のデータで確かめてみた。

繰り返しているのは、何か

やったことは単純だ。 元のチャートと同じBitstampの価格を、2012年から日次で引いてきて、週足に直す。 それを4年ごとの周期に切り分け、暦の区切りではなく、値動きそのものが作った大底を起点にそろえる。 あとは、各周期が大底から天井まで何週間かけ、何倍になったかを測るだけである。

4年ずつ4段に積み、局面で色分けした構図は、元図と同じように描ける。

まず、サイクルそのものは確かにあった。 大底から天井までの時間が、3回とも驚くほど揃っている。 2015年1月の底から2017年12月の天井まで153週。 2018年12月の底から2021年11月の天井まで152週。 2022年11月の底から2025年10月の天井まで150週。 どれもおよそ150週、3年弱だ。 半減期を起点に測っても、天井は毎回その75週から78週後に来ている。 弱気で底を打ち、仕込みを経て上がる、という順番も3回とも崩れていない。 ここまでは、投稿の言うとおりに見える。

サイクルごとの上げ幅

崩れていたのは、上がり幅のほうだった。 同じ「大底から天井まで」を、今度は時間ではなく倍率で見る。 2015年からの周期は、底から天井まで129倍になった。 次の周期は22倍。 直近の2022年からの周期は、8倍でしかない。 周期を追うごとに、上げ幅は数分の一に縮んでいく。

3つの周期を実際の大底でそろえ、共通の対数目盛で重ねたもの。天井までの時間はほぼ揃うが、高さは129倍、22倍、8倍と落ちていく。

元のチャートでこの痩せが見えないのは、絵の描き方のせいだ。 4段はそれぞれ別の縦軸で描かれている。 129倍の相場も8倍の相場も、同じ高さの箱に押し込めば、同じ大きさの山に見える。 「毎回同じ形」という印象は、ここから来ている。

直近の2025年も、10月に12万6千ドルの最高値はつけた。 天井そのものは、ちゃんと来ている。 ただ、そこまでの吹き上がりは、2017年や2021年の比ではない。 サイクルは時計としては正確でも、値幅としては年々割に合わなくなっている。

元図が省いているもの

縦軸の取り方だけではない。 元図には、相場を実際よりきれいに見せる仕掛けが、ほかにもある。

一番効いているのは、各段を切る位置だ。 どの段も、右端は「2nd Bull」の年の暮れで終わっている。 それは天井のすぐあとにあたる。 その先に何が起きたかは、描かれない。 2017年12月の天井のあと、価格は次の底まで84%落ちた。 2021年11月の天井からは78%。 毎回、天井から8割方が消えている。 その暴落は、次の段の頭で「Bear」として描き直される。 一つの周期のなかで、上げて、天井をつけて、崩れるまでを見せる段は、どこにもない。 崩れは、いつも次の周期のはじまりに付け替えられている。

各段が切られる位置(天井の直後)と、その先にカットされている暴落。天井から次の底まで、毎回8割方が失われている。

滑らかな色の帯も、同じ働きをする。 「1st Bull」「2nd Bull」の緑の区間は、まっすぐ上がっているように見える。 実際には、その途中で何度も大きく崩れている。 2021年は、天井をつける前の5月に、半値まで落ちた年だ。 帯の色は、その一撃を塗りつぶしてしまう。

こうして元図は、弱気相場も、途中の暴落も、周期の切れ目や色の下に隠す。 残るのは、4回きれいに上がっていく絵だけになる。

なぜ小さくなるのか

上げ幅が縮む理由は、おそらく一つではない。 考えられるものを、確度の高い順に5つ挙げる。 どれも、上げを鈍らせる方向に働く。

  1. 相場が大きくなりすぎた:時価総額が大きいほど、同じ倍率を出すのに桁違いの資金がいる。底値150ドルを129倍にするのと、1万5千ドルを同じ129倍にするのとでは、要る金額がまるで違う。成長した資産の宿命に近く、これが一番効いている。
  2. 半減期の供給ショックが薄まる:削減される新規発行の量が回ごとに小さくなり(50→25 は 6.25→3.125 よりずっと大きい)、その削減を測る母数の既存供給は逆に膨らむ。震源だったはずの効きが、二重に弱まっている。
  3. 買い手の構造が変わった:2024年の現物ETFで機関の資金が入り、機械的な押し目買いが値動きを均す。個人の熱狂が一気に天井を吹き上げる構図は起きにくい。ただし機関の資金は流出もするので、これは両刃でもある。
  4. サイクルが周知され、先回りされる:「4年で一巡する」が有名になるほど、参加者が転換を先回りする。タイミングは当たりやすくなる一方、天井の吹き上げはならされていく。
  5. マクロ次第の資産になった:世界の金融緩和や金利という、より大きな流れに値動きが引きずられるようになった。半減期という固有の周期が、マクロの周期に上書きされつつある。

「同じだけ上がる」は、どこまで本当か

4年サイクルは、時計としては本物だった。 弱気で底を打ち、半減期のおよそ1年半後に天井をつけるリズムは、3回続けてほとんどずれていない。 その意味で、今が弱気の途中で、いずれ強気に転換する、という見立てはあり得る。

サイクル通りなら、弱気が底を打って上げに転じるのは、天井から52週から54週後にあたる。 天井は2025年10月だったから、この記事の時点(2026年7月24日)から数えて、あと10週間から12週間(約3ヶ月)、2026年の秋ごろになる。

だが、次も同じだけ上がる、という部分は当てにできない。 上げ幅は周期ごとに数分の一に縮み、直近ではもう8倍だ。 効くのは、方向とタイミングまでだ。値幅までは効かない。

サイクルを地図として使うのはいい。 ただ、その地図に描かれた山の高さは、行くたびに低くなっている。 待っていればまた大きく上がる、と読むのなら、そこだけは分けて考えたほうがいい。