ビットコイン、$64,000の壁で足踏み ― 「恐怖」は薄まり、米国の売り圧力も一巡へ
2026年7月13日
本稿は 2026-07-13 08:00 JST 時点で取得したデータに基づきます(オンチェーン指標は7/11、価格・センチメント・米国需要(Coinbase Premium)は7/12、ETF資金フローは7/10、ネットワーク概況は上記取得時刻の時点。レポート作成時のライブ再取得はしていません)。
ビットコインは$63,800前後で、この1週間ほとんど動いていません。上にも下にも行かない膠着ですが、中身を見ると「悪化が止まりつつある」サインがいくつか灯り始めています。
1. 全体像:値動きは止まったが、地合いは静かに底入れの方向
- 価格はほぼ横ばい: 現在値は約$63,800。1週間前と比べて+0.4%、1か月前と比べても+0.5%と、実質的に動いていません。50日移動平均(約$64,900)も200日移動平均(約$73,900)も下回る「デッドクロス圏」で、中期のトレンドは依然として弱いままです。
- ただし割安感は健在: 割高・割安を測るMVRV Z-Scoreは過去4年で下位2割の水準。歴史的に見れば「安い場所」にいることは変わりません。
- 雰囲気は改善: 市場心理を測るFear & Greed指数は26(恐怖)。1か月前は12(極度の恐怖)だったので、パニックの色はかなり薄まりました。ただし「強欲」にはほど遠く、まだ楽観には早い水準です。
- 次の材料は米国のマクロ: 米国では7/14(現地時間)に6月分の消費者物価指数(CPI)が発表され、月末の7/28〜29にはFRBの金融政策会合が控えます。相場が動くとすれば、きっかけはこちら側から来る可能性が高い状況です。
2. 注目すべき4つのポイント
① 米国勢の「売り疲れ」―― ディスカウントがほぼ解消
- Coinbase Premium: 米国の買い需要の強さを示すこの指標は、68日連続でマイナス圏(=米国勢が弱気)です。ただしマイナス幅は着実に縮んでおり、1週間前の約-0.11%、1か月前の約-0.07%に対して、足元は約-0.03%とほぼゼロまで戻ってきました。売り叩かれる圧力そのものが弱まっています。
- ETF資金フロー: 6月は月間で約40億ドルという記録的な資金流出でしたが、7月に入って流れが変わり、7/10には約+9,000万ドルの流入。直近7営業日の合計でも小幅ながらプラス(約+1.2億ドル)に転じています。長い流出の連鎖がひとまず止まった格好です。
② 長期勢の備蓄は続く。ただし「勢い」は頭打ち
- ネットポジションの変化: 長期保有層(155日以上の保有者)の過去30日の保有量変化は+約29.7万BTC。過去4年で見れば上位2割に入る高水準で、依然として「静かな備蓄」が続いています。
- ただし減速の兆し: 1週間前は+約31.1万BTC、1か月前は+約32.2万BTCでしたから、積み増しのペースはやや落ちてきました。下値を支える力そのものは健在ですが、「買いの勢いがさらに強まっている」段階は過ぎた可能性があり、ここは引き続き注視すべき点です。
③ 短期勢の含み損は続くが、投げ売りは一巡
- 原価は$68,700: 直近に買った人たち(短期保有者)の平均取得単価は約$68,800。現在価格はこれを約7%下回っており、彼らは平均して含み損を抱えたままです。この水準が当面の「上値の壁」になります。
- 投げは落ち着いた: 利益で売れているか損切りで売れているかを示すSOPRという指標は、6月に1を割り込んで沈んでいましたが、足元では1のすぐ上に戻りました。慌てて損切りする動きは、いったん収まったと見られます。
④ マイナーの冬は続く
- 収益は低水準のまま: 採掘業者の収益水準を示すPuell Multipleは0.69と、過去4年で下位2割の圏内。採算の苦しい状況が続いています。
- 淘汰の進行: 計算能力(ハッシュレート)は約915 EH/sで、この30日で約-1.8%と減少。採掘難易度も次回調整で約-2.5%の低下が見込まれており、効率の悪いマイナーが撤退している構図です。短期的には保有BTCの売却圧力になりますが、難易度が下がれば生き残ったマイナーの採算は改善するため、中長期にはむしろ供給圧力を和らげます。
(補足:手数料市場は1〜2 sat/vBという最低水準で閑散。オンチェーンの投機的な動きも乏しく、価格の停滞と整合的です。)
3. 相場転換を見極める「3つの分岐点」
- 7/14の米CPI(6月分): 5月のインフレ率は前年比4.2%と2023年4月以来の高さで、物価は粘っこいままです。ここが予想より弱ければ利下げ期待が戻り、リスク資産全体に追い風。強ければ逆に、金利高止まりの重石が続きます。
- 7/28〜29のFRB会合: 市場は「据え置き」を7割前後織り込んでおり、利下げはほぼ期待されていません。金利は3.50〜3.75%に4会合連続で据え置かれています。声明のトーンが和らぐかどうかが焦点です。
- $68,700を上抜けられるか/ETF流入が定着するか: 短期勢の原価であるこの水準を明確に超えれば、「売り圧力」が「買い支え」に反転します。そのためにはETFへの資金流入が単発で終わらず、週次・月次でもプラスに定着することが必要です。なお米国の規制面では、暗号資産の枠組みを定めるCLARITY法案が上院で停滞しており、8月の休会前という狭い窓に入りました。成立見通しの後退は、期待を先取りしていた分だけ重石になり得ます。
総括
売り手も買い手も出尽くしたような、静かなレンジ相場です。値動きだけを見れば退屈ですが、内実は「最悪期を脱しつつある」方向に傾いています。米国勢の売り圧力は薄まり、恐怖は和らぎ、長期勢は買い続けている。一方で、短期勢の含み損という上値の壁は残り、長期勢の買いの勢い自体はやや鈍り始めました。動意づくきっかけは、今週のCPIと月末のFRB会合というマクロ側にありそうです。
本稿は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。将来の価格動向を保証・示唆するものではなく、投資判断は各自の責任において行ってください。