ビットコイン、$62,000割れ ― 中東リスクで反発が失速、長期勢の「備蓄」にも陰り
2026年7月14日
本稿は 2026-07-14 08:23 JST 時点で取得したキャッシュデータに基づく(オンチェーン指標は7/12、価格・センチメント・ETF資金フロー・米国需要は7/13、ネットワーク概況は取得時刻時点。レポート作成時のライブ再取得はしていない)。
7月に入って$64,000台まで戻していたビットコインは、7/13に約$61,800まで急落し、月初からの戻りをほぼ吐き出しました。米国とイランの軍事的緊張が再燃してリスク回避が広がったことが直接の引き金です。ただ、それ以上に気になるのは、これまで相場の下値を支えてきた長期保有者の動きに変化の兆しが見えることです。
1. 全体像:割安圏だが、下支え役が一枚はがれかけている
- 価格は再び下向き: 最新終値は約$61,800。1週間で約-3%、1か月で約-4%です。50日移動平均(約$64,600)も200日移動平均(約$73,700)も大きく下回る「デッドクロス圏(弱い地合い)」が続いています。
- バリュエーションは依然として割安: 時価総額と取得コストの乖離を見るMVRV Z-Scoreは0.37前後で、過去4年で見れば下位2割の安値圏。「歴史的に見て安い」という構図自体は崩れていません。
- 今回の下げの中身: 中東情勢の緊迫で原油が上昇し、「インフレが下がらない→利下げも遠のく」という連想が働きました。加えて、レバレッジをかけた買いポジションの強制決済(ロスカット)が下げを増幅させた形で、現物の投げ売りというより「先物主導の一時的な出直し」の色が濃いです。
2. 注目すべき4つのポイント
① 短期勢の含み損は約10%まで拡大
- コストベース(平均取得単価): 短期保有者(保有155日未満)の平均取得単価は約$68,700。現在価格(約$61,800)はこれを大きく下回り、直近で買った層は平均して約10%の含み損を抱えています(1週間前は約8%)。
- 売りの温度感: 短期勢の損益状態を示すSOPRは1をわずかに下回る水準(約0.997)。「戻ったら投げる」層が薄く出続けており、上値の重さの正体はここにあります。
② 長期勢の「静かな備蓄」にブレーキ
- 蓄積ペースの鈍化: 長期保有層(155日以上)の過去30日の保有量変化は+約29.7万BTC。プラス圏=買い集めではあるものの、1週間前(+約30.3万BTC)、30日前(+約31.0万BTC)と比べてじりじり減っています。勢いが落ちているということです。
- 利益確定の気配: 長期勢が売ったコインの利益状態を示すLTH-SOPRが、30日前の約0.77、1週間前の約1.06から、足元は約1.35へ跳ね上がりました。「損切りしていた長期勢」が「利益を乗せて売る長期勢」に変わりつつあり、これまで最も強固だった下支えが、わずかながら供給側に回り始めた可能性があります。ここは今後2〜3週間、最も注意して見たい変化です。
③ 米国需要は再びしぼんだ
- Coinbase Premium: 米国勢の買い意欲を示すこの指標は約-0.10%と、マイナス幅がむしろ広がりました(1週間前は約-0.06%)。マイナス圏(米国需要が相対的に弱い)は69日連続と、記録的な長さを更新中です。
- ただしETFは踏みとどまっている: 現物ETFへの資金は、直近7営業日の合計で約+4.2億ドルの流入超。6月の連続流出局面からは明確に持ち直しています。「機関経由の買いは戻りつつあるが、米国の現物市場そのものはまだ冷えている」というちぐはぐな状態です。
④ マイナーの体力は細ったまま
- 採掘の縮小: ネットワーク全体の計算力(ハッシュレート)は約915 EH/sと、30日で約-9%。採算の合わない業者の停止が続いていることを示します。
- 収益水準: マイナー収益の水準を示すPuell Multipleは0.72前後と、過去4年でも低い部類。ただし直近の難易度調整は微増(次回+0.6%程度の見込み)で、6月のような大幅な下方修正による「救済」は当面期待しにくい状況です。
(補足:ネットワークの手数料は最安の1 sat/vB近辺のまま。安い手数料の取引が滞留しているだけで、投機的な混雑ではありません。価格停滞と整合的です。)
3. 相場転換を見極めるための「3つの分岐点」
- 本日発表の米CPI(6月分)とFRBの姿勢: これが目先の最大の焦点です。インフレが落ち着けば利下げ期待が戻り、リスク資産に追い風。逆に高ければ「高金利が長引く」観測が強まります。7/28〜29のFRB会合は「据え置き」が優勢で、利下げはほとんど織り込まれておらず、むしろ利上げを見込む声も残るタカ派寄りの地合いです。
- 中東情勢と原油が落ち着くか: 今回の下げの引き金は地政学リスクと原油高です。緊張が和らげば、この分の下げは比較的素直に戻る性格のもの。逆に長引けば「インフレ再燃→金融引き締め」の経路で、じわじわ効いてきます。
- 長期勢が売り手に回り切らないか: 上値では引き続き約$68,700(短期勢の原価)の奪回が節目ですが、それ以前に、長期勢の蓄積が止まって明確な分配(売り越し)に転じないかどうか。ここが崩れると、下値の堅さという最後の支えが失われます。市場心理(Fear & Greed指数)は28で「恐怖」圏ながら、1か月前の13から改善しており、パニックには至っていません。
総括
割安なバリュエーション、恐怖の緩和、ETF資金の戻りといった「底練りからの回復」を示す材料は残っています。一方で、地政学リスクが上値を叩き、米国の現物需要はしぼみ、これまで下値を守ってきた長期勢の買い集めにも鈍化と利益確定の兆しが出てきました。「底は堅いが上がらない」局面から、「底の堅さ自体が試される」局面へ、一段階進んだと見るべきでしょう。本日のCPIと今月末のFRB会合を通過するまでは、方向感の出にくい神経質な展開が続きそうです。
本稿は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。将来の価格動向を保証・示唆するものではなく、投資判断は各自の責任において行ってください。